天井の高さが思考や行動に及ぼす影響

ミネソタ経営学部教授 Joan Meyers-Levy が the Journal of Consumer Research の研究によれば

  • 天井が3メートルの高さにあるとき、人はより自由に、抽象的に考えることができる。
  • 天井が2.5メートルの高さにあるとき、ひとは個々の事実に意識の焦点を向けやすい。

のだそうだ。
http://www1.umn.edu/urelate/national/stories/ceilings.php

サイエンスとして十分に実証されていると言えるかどうかはこの8月に出版予定の論文を読む必要があるようなのでそれは置いておくとして、これは僕自身の実感や体験と矛盾しない結果だ。ドイツで滞在していた部屋の3メートル強の高い天井と、そこで暮らしながら感じた自由な気分をいまありありと思い出すことができる。


人の思考は身体空間を通して物理空間と強くリンクしている。
前向きの思考、後ろ向きの思考と言う表現は身体空間における前後への注意の濃度と関連がある。
地に足のついた考え方と、浮き足立った判断との違いは足の置き場に関連がある。
同様に大所高所に立った抽象的思考を行うことと、高いところに意識を置き、上から眺める視点を持つこととは大いに関係がある。


したがって物理空間へ意識を配る様式を積極的にコントロールすることが、さらには自分の思考の様式自体をコントロールすることにもつながる。そのために身の回りの環境を整えるのは強力かつ簡便な方法だ。
キリスト教の教会のように高い高い天井にきれいなステンドグラスの張られた空間が作られているのは、神に思いを馳せて倫理を語るのにまさにふさわしい。大企業ビルディングで社長室が最上階にあるのは会社全体をひと目で掌握するのにまさにふさわしい。
逆に小さな小さな茶室に少人数を集めたお茶会は、心をつくし腹を割って個人的なつきあいを深めるのにまさにふさわしい空間である。


いま自分がいる空間をぐるりと眺めてみよう。この環境が僕らの思考と心の中の風景を決めているのだとしたら僕らはどうすればいいだろうか。研究活動にふさわしい空間とはいったいどのようなものだろうか?